第9回GE DWIBS研究会報告
今回は初の地方会開催として静岡赤十字病院で開催させて頂きました。参加人数は前回を超える42名で、なんと名古屋や奈良、福井からもご来場頂きました。関東圏のいつもご参加いただいている方々にも、多数ご参加いただきました。皆さんありがとうございました。
今回の主管は焼津市立総合病院の宮崎さんと済生会静岡総合病院の山崎さんでした。宮崎さんの司会から会は始まりました。
GEHCの井下さんからはDWIBSの基礎として、脂肪抑制、ASSETとPhase FOV、MPG印加方法、その他の設定 のお話がありました。
脂肪抑制は磁場強度によって最適なものが変わり、1.5TではSTIRのみで良好な画像が得られるが、3T装置ではSTIRのみだと脂肪抑制不良によりケミカルシフトが発生するためSSRFを併用すると良好な画像が得られる。しかし、頸胸部領域では水抑制になることがあるため、使い分けが必要である事、歪みを抑えるためには可能な限り大きなASSET factorを使用したいが、コイルや撮像断面に依存性があり、なかなか難しいので大きなFOVにてphase FOVを併用して低減する必要がある事、MPGの印加方法についてはALLは1軸ずつ印加し取得したものを合成しており等方性拡散となっているが、3 in 1は3軸同時印加を行なっており異方性拡散となっている、TETRAも3軸同時印加であるが、それを4方向に行っているためSNRは高くなり、等方性拡散となっているとの事でした。多軸同時印加は最短TEが短くできるという利点があり、ALLでもGradient optimization を入れると多軸同時印加となるとの事でした。
また、以前に研究会で注目されたDSEのお話もあり、1.5TのCoronal DWIBSではDSEを入れる事で椎体や腎臓がよりシャープになるとの事で、実際のDWIBS画像をご提示頂きました。
静岡済生会総合病院の山崎さんからは論文レビューがありました。
日本でのWB-DWIの立ち位置として骨転移の診断に関してはエビデンスレベルCと推奨度が低くなっているが、これは科学的根拠が乏しいと言う理由でしかなく、RECISTのガイドラインやEORTCでは有用性が認められており推奨されているとの事でした。
また、MET-RADS-P(前立腺癌からの骨転移に関する標準化のためのガイドライン)が提唱された事により今後ヨーロッパでは更に普及していくのでは?との事でした。
続いてEuropean Journal of Radiorogyに投稿されたWB-DWIとPETの比較としてDWIBSの悪性腫瘍原発巣および転移巣の検出能に関する論文のご報告ですが、両者は感度、特異度、AUCにおいてほぼ同等であり、他のシーケンスを組み合わせたり、PETと併用する事でさらに検出能が上がるとの事でした。
焼津市立総合病院の宮崎さんからは現在GE DWIBS研究会のブログに掲載されている標準プロトコルのご紹介のお話でした。
Coil Sliding法では位置情報は変わらないためpastingもfisionも可能であり、スライド時に患者とCommunicationが取れるというメリットがある事、また、磁場強度、ボア径、撮像断面など、様々なバリエーションがあるが、ある程度同じような画像を提出する事が重要であり、GE DWIBS研究会に記載されている撮像条件はCoil Configまで記載されているため、DWIBSを始める時には非常に有用なツールになるので是非ご参照下さいとの事でした。
JA厚生連遠州病院の内田さんからはPioneer 3.0Tでの検討のご報告でした。
Ver.25では脂肪が結構残っている印象だったが、Ver26.1になってからは感度補正がreFINEになった事で、中心部の均一性が良くなり腎臓や神経の走行が良く見えるようになり、新しく追加されたRTCFは各スライスごとに中心周波数を調整するため、脂肪抑制や歪みの低減において明らかに良好である。また、ASSET factor3.0では良好なMIPが取得できたが元画像をみると展開エラーによるアーチファクトが顕著であり、非常に厳しかったとの事でした。DSEはTEが延長するためSNRが下がるが筋肉なども抑制されMIPは良好である。しかしSNRは担保したいためRTCF+AASET 2.0+SSRF(腹部骨盤領域のみ)+RTFAが良いとの事でした。
続いて甲賀病院の佐藤さんからはVoyager での検討のご報告です。Head neck unitとAA Coilを2枚使用し、3stationで6cmのオーバーラップで撮像していて、最初に撮影したDWIBSは脂肪抑制が非常に不良で歪みが強かったがFOV60cm、phase FOV 0.6、TEをmin full 、脂肪抑制を全てSSRFに設定することにより、良好な画像を取得する事が出来るようなったとの事でした。SSRFは選択的脂肪抑制法なので、頸胸部では水抑制になりやすい印象を持っていますが、それがほとんどないとの事で驚きました。また、改善後のプロトコルではSTIRのみでも以前よりも脂肪抑制の良好な画像を取得できるとの事でした。
次回のGE DWIBS研究会 主管の東京女子医大東医療センターの小島さんから6/30土:東京赤坂で開催されるGE DWIBS研究会の概要をお伝えいただきました。座学だけですが、充実した内容になっているので是非皆さん次回もご参加ください。
最後に再びGEHCの井下さんから画像合成法のお話がありました。
デモ機のコンソール画面を投影し、実際の画像を使用して画像処理を行いました。
画像をMIP処理する場合に、そのままバッチ処理すると上下のブランク部分も画像として認識しているため、pastingした際に黒い帯が入ってしまうので長方形FOVとしてSaveする必要があるとの事でした。
しかも、この処理過程は保存する事ができ、Advanced modeにてWW、WLまで設定保存できるとの事でした。
私の施設では長方形FOVを多用しているため、この情報はとても朗報となりました。
また、Live demonstration では、メディカルエキスパートの天板も登場し、実際の使用法を宮崎さん、山崎さんが実演していました。当院も1.5Tで良好な画像を得るにはこの方法しかないので、とても参考になりました。
3.0Tでの冠状断DWIBSでは静岡赤十字病院の方が操作し、私はアドバイザーを務めさせて頂きました。歪みが少なく、ステーション間でもズレの少ない画像を取得できたと思いますが、残念ながら今回は頸胸部領域でケミカルアーチファクトが発生してしまいました。また、通常はDSEを入れると撮像時間が延長しますが、SSRFのUser CVの元々1となっている所を1と打ち直すだけの事で、撮像時間の延長なく撮影できると言う裏技を目の当たりにしました。また、GEさんに画像処理の保存方法を実演して頂き、座学だけではなく、実際に行うことで理解が深まりました。
次回の主管、小島さんです。次回も皆さん宜しくお願いします。
文責(上尾中央総合病院:石川 横浜栄共済病院:高橋)
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